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農業特集:ベトナムの農作物生産業


農業特集:ベトナムの農作物生産業
ベトナムの農作物生産業の規模
 ベトナムの農作物生産額はGDPの約8%を占めており、農林水産業の主力である。
 2016~2018年の農作物生産額の推移では2016年以外、年間2%以上で成長しており、2018年の農作物生産額は約208億USDに達した。
 農作物生産額は、ベトナム国内の農作物の収穫量と世界の農作物の値動きによって変動する。収穫量に関しては、ベトナムは毎年台風の被害を受けており、更に、近年の気候変動による異常な気象により、重大な被害を受けることがある。但し、2013年の半ばからベトナム政府は効率向上指向の農作物生産の再編を行っており、生産性の改善が行われている。また、世界の農作物の値動きもベトナムの農作物生産活動に影響を与えている。トウモロコシと大豆は、国産価格が輸入品と競争できないことから、2019年度の計画では、栽培面積が減少する。キャッサバも輸出価格が下がったため、栽培面積が減少した。
 2013年~2015年は農作物の生産が安定していたことから約2%で成長していたが、2016年は世界の農作物の低価格化がベトナムの農作物生産のディスインセンティブになったことに加え、ベトナム北部の極寒、中部の冠水、南部の干ばつと塩水侵入の気深刻な被害を受けたことによりマイナス成長となった。2017年は、天候による被害も少なく、生産効率の改善効果が現れたことにより、2016年の最低状況から2.23%のプラス成長に回復した。2018年はベトナムの農作物生産は絶好調と言われ、生産額は2.52%増加した。栽培種類再編及び栽培技術向上により、生産性が向上したためと考えられる。
 今後、ベトナムの農作物生産額は、農作物の栽培種類再編及び高度技術採用により、引き続き2%前後で成長すると見込まれる。生産性向上及び高付加価値化を追求する取り組みが発展の要因として注目されている。
農業特集:ベトナムの農作物生産業
ベトナムの栽培面積と生産量の現状
 ベトナムの農作物の栽培面積は約1,500万haであり、この10年間で約120万ha拡大している。
作物別には、コメ・穀物、工芸農作物(コーヒー、ゴム、カシューナッツ、胡椒、茶など)、果樹、野菜とその他とのカテゴリーに大きく分けられている。2017~2018年の栽培面積は、コメ・穀物が最も多く約6割を占めており、次いで工芸作物が20%、野菜が7%、果実が6%を占めている。
 コメはベトナムの主食であり、伝統的な主要輸出品であるため、農作物栽培面積の半分を占めている。穀物は、トウモロコシが大半を占めている。
 工芸農作物は、コーヒー、ゴム、カシューナッツ、胡椒、茶などであり、農作物栽培面積の約2割を占めている。工芸農作物は、長期工芸農作物と短期工芸農作物に分けられている。長期工芸農作物はコーヒー、天然ゴム、胡椒、カシューナッツ、茶であり、短期工芸農作物はサトウキビ、落花生、大豆である。工芸作物の中でも主力品目は長期工芸農作物である。
 ベトナムの代表的な果物はオレンジ、みかん、ザボンなどのかんきつ類、ライチ、ロンガン、ランブータンというムクロジ科、及びマンゴーである。
 また、様々な野菜と同様に、キャッサバ、さつまいももベトナムの代表農作物である。
 この10年間で、コメと穀物が27万ha増、短期工芸農作物が20ha万減、キャッサバが3万減、さつまいもが4万減している。一方、長期工芸農作物が49万ha増、果樹が15万ha増、野菜が24ha万増となっている。
 ベトナムの農作物の大部分が小規模農家で生産されている。個人の農場及び農家が90%程度を占めており、生産規模では0.5ha未満の農家が全体の69%、0.5~2haの農家が25%である。企業が運営している農家は栽培面積の僅か6%である。
農業特集:ベトナムの農作物生産業
ベトナムの農作物生産開発政策

 ベトナム政府は、2013年6月と2017年11月に農業再編政策を発表した。この政策では、効率が高い栽培種類を選定し、高度技術を採用し、収穫後の加工を強化することにより、生産性及び付加価値を向上することを発表した。具体的な実施内容は下記の通りである。

成長目安
・農作物生産額を年間2~2.5%、1ha当たりの収益を3%増加させることを目指している。(現在の実績が既にこの目標に達している。)

生産性改善の取り組み
・地域ごとに優位な農作物を選定し、集中する。
・生産規模を大型化する。
・生産性・品質向上、生産コスト削減、気候変動対策を目指し、高度技術を採用する。特に、持続的な集約農業のノウハウや省水・干ばつ対策の技術を採用する。2017年に、機械化促進、安心・安全栽培及び有機栽培の勧め、無機肥料及び農薬品の使用の削減の項目が追加された。

農家を応援する体制
・栽培から保管・製造・販売までのサプライチェーンを構築する。企業と農家の連携・契約締結を勧める。農家と農家の連携・協同組合化を推進する。
・収穫後損失削減及び高付加価値化を目指し、農作物の保存及び加工技術の開発に取り組む。(農業に投資する企業の優遇及び財政援助の詳細政策は2018年4月に公布された。)
・災害などにより、農業者が受けることのある損失を補填する農業保険援助制度を導入する。(詳細政策が2018年4月と2019年9月に公布された。)

 政府の基本方針は変わらないが、実施の詳細項目は状況に合わせ、随時多少変更されている。例えば、2018年は豊作だったため、農作物生産額は前年実績を大きく上回ったが、2019年の成長率の目標は低めの1.78%に抑えられている。なお、トウモロコシに関しては、国産のコストが輸入品と競争できないことから、2019年度の計画では、栽培面積が減少すると見込まれている。

 農業再編政策の概要としては、コメの栽培を減らし、果物や水産物などの高付加価値農産物の生産へ切り替える一方、主力の工芸農作物の栽培質を強化するとしている。下記は2013年と2017年に発表した品目ごとの2020年までに目指す指標である。

コメ
 近年気候変動の影響により、コメ栽培が困難になったエリアが増えている。その為、コメ栽培が非効率になったと判断されたエリアを果樹や工芸農作物の栽培、または、エビの養殖などの水産物生産へ変換している。ただし、食糧確保のため、コメの栽培面積の最低限として380万haを確保している。近年の傾向としては、コメの栽培面積を減らす一方、栽培効率が高い品種へ改善することにより、生産量を拡大する方針である。コメの年間生産量の目標としては4,500万トン以上としている。

トウモロコシ
 政策上は、飼料原料の輸入を減らすため、トウモロコシと大豆の栽培を拡大するとしており、トウモロコシの年間生産量を850万トンとすることを目指している。しかし、トウモロコシの国内生産のコストが高いため、実際のところ、この目標が実施できず、トウモロコシの栽培面積が減少している。

工芸農作物
 2013年発行した政府の工芸農作物の政策として、コーヒー50万ha、ゴム80万ha、カシューナッツ40万ha、胡椒5万ha、茶14万haを確保した上で、単作化を行い、栽培の生産性と品質を強化するとしている。
 また、工芸農作物の主力作物は長期工芸農作物である。これらの作物(木)は一回植え、毎年収穫するため、老化により徐々に収穫率が低下することがある。栽培の効率改善の一環として、老化した木を再栽培することを行っている。例えば、老化したコーヒー15万haを再栽培する計画がある。

野菜と果物
 地域の特性を活かした野菜と果物生産の大規模化、高度技術化を進めている。
なお、キャッサバに関しては、2017年まで輸出価格が下がる傾向にあったため、2017年に発表した計画では栽培を縮小することを発表している。

 ベトナムの農作物生産額は、引き続き2%程度で成長すると見込まれる。2013年~2020年の農作物生産再編政策により、今後、長期工芸農作物、果樹、野菜の生産量が増加し、収益拡大のけん引役となる。
 今後の展開では、栽培技術の改善及び収穫後の保存・加工技術開発がもっとも重視されている。ベトナムは、栽培面積の拡大よりも、生産性を向上することにより、生産量を拡大し、品質を追求するとともに、未加工農作物から高付加価値の加工品の生産を拡大することを目標としている。

(2019年9月)




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