シンガポールは小さな国でありながら、東南アジアで最も一人当たりのGDPが高く、経済成長も安定している。米国シンクタンク・ヘリテージ財団の2024年版「経済自由度指数」や世界銀行の2023年版「ビジネス環境」報告書の業務効率のランキングで1位となったシンガポールには、多くの外資系企業が進出している。なかでもアジアの事業を強化するための統括拠点を設置してケースが多く、近年は、小売業や飲食業など製造業以外の幅広い業種の進出が増加している。安定した政治・社会情勢や良好な生活環境などが、シンガポール進出の魅力となっている。
日系企業がシンガポール進出を検討する際には、市場動向や製品・サービスのニーズ、参入企業の状況、流通チャネル、価格動向など、市場に関する情報の把握が不可欠である。また、業界ごとにニーズや課題は異なるため、業界動向調査・ニーズ調査をしっかり行うことが重要である。
マーケティングリサーチの方法としては、インターネットで情報を収集することもできるが、インターネットだけでは得られない情報も多くあり、シンガポールの市場を十分に理解するためには、現地企業や消費者へのヒアリングが必要な場合も多くある。
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【人口】 約604万人(2024年)(1)
【面積】 735.2平方キロメートル(東京23区よりやや大きい)(2)
【GDP】 約7,314億USドル(2024年)(1)
【一人当たりのGDP】約84,734USドル(2023年)(5)
(ASEAN(4)第1位;日本対比約2.5倍)
【言語】 英語、中国語、マレー語、タミル語 (2)
【通貨】 シンガポール・ドル(SGD)
【民族】 中国系76%、マレー系15%、インド系8%、その他 2%(2024年)(1)
【宗教】 仏教、イスラム教、ヒンドウ教、キリスト教など
【地域】 東南アジア
【主な気候】 熱帯性気候で、年中高温多湿である。日平均温度は27℃~28℃である。(3)
(1)シンガポール統計局
(2)JETRO
(3)Meteorological Service Singapore (MSS)
(4)ASEAN:東南アジア諸国連合(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス)
経済
シンガポールの国内市場規模は小さく、天然資源にも乏しいが、経済は安定している。2024年の名目GDPは約7,314億USドルとなり、高所得国に分類されている。シンガポール統計局によると、2024年の一人当たり名目GNI(国民総所得)は約75,946USドルであり、一人当たりのGDPは約90,689 USドルに達し、東南アジアにおいて第1位である。なお、2024年の失業率は2%であり、先進国の中でも最も低い水準の一つである。また、自由経済度が高く、米国シンクタンク・ヘリテージ財団による2024年版「経済自由度指数」の世界ランキングで1位となった。
2014~2018年のGDP成長率は、3~4.5%で推移していたが、2019年にはエレクトロニクス製品の需要減少と米中貿易戦争の影響により、成長率は1.3%に減速した(2024年シンガポール統計局)。さらに、2020年には新型コロナウイルス感染拡大の影響により、実質GDPが2004年以降で初めて減少した。しかし、シンガポール政府が財政政策をはじめとする適切な対策を講じたことで、その影響を抑制することができた。
2021年には、製造業の業績に牽引され、GDPは2010年以降で最大の成長率である9.8%を記録した。2022年には外需の弱さや製造業における循環的要因の影響を受け、前年の9.8%から4.1%へと減速した。2024年のGDP成長率は4.4%となり、2023年の1.8%を上回った。2024年のGDP成長率は主に、卸売業、金融・保険業、製造業が牽引した。シンガポールは厳しい国際情勢の中にあっても、質の高い投資を呼び込み、良質な雇用を維持し続けている。なお、2025年には1~3%の経済成長が見込まれている。
人口
シンガポール統計局によると、2024年の人口は604万人であり、そのうち31%は外国人(非永住者)である。また、民族構成は中国系(76%)、マレー系(15%)、インド系(8%)、その他(2%)である。宗教面でも多様性があり、仏教(31%)、キリスト教(19%)、イスラム教(16%)、ヒンドゥー教(5%)のほか、無宗教者も20%を占めている(2020年シンガポール統計局)。
なお、2024年の人口は前年比2%の増加となっており、その主な要因は非永住者人口の前年比5%増である。過去5年間(2019~2024年)の平均人口増加率は1.1%であり、前の5年間(2014~2019年)の0.8%をわずかに上回った。これは主に、新型コロナウイルスの感染拡大によって遅延したプロジェクトの再始動により、建設、造船、プロセス(CMP)セクターでの就労許可保有者の増加が影響したと考えられる。
現在、シンガポールは日本と同様に、高齢化と労働力人口の減少という課題に直面している。2024年の人口の中央値は43.0才から43.4才に上昇した。なお、米国中央情報局(CIA)によれば、日本の中央値は、49.9才である。シンガポール統計局によると、2024年における高齢者(65歳以上)の割合は19.9%であり、2030年には24.1%に上昇することが予測されている。これにより、今後は高齢者向けサービスや技術の需要がさらに高まると見込まれる。
シンガポールの主力産業は製造業とサービス業である。2024年のシンガポール統計局によれば、シンガポールにおいて規模の大きな産業は、卸売・小売業、製造業、金融・保険業である。
GDP産業別構成比をみると、卸売・小売業が21.6%、製造業が17.3%、金融保険業が14.3%となっている。他には、ビジネスサービスが11%、運輸・倉庫業が9.1%、情報通信業が6%、その他のサービス業が9.6%である。
卸売業では、シンガポールの卸売業者は国内外のバイヤーと取引しており、販売の多くは海外向けである。新型コロナウイルス拡大前は燃料や化学薬品の卸売が成長していたが、2019~2022年は機械・設備・消耗品分野が最も成長した。特に自動車や電子機器の需要の高まりにより、半導体などの電子部品や通信・コンピューター関連の卸売が大きく伸びた。
製造業では、エレクトロニクス、石油化学・化学関連、精密器械、バイオメディカル(医薬品・医療機器)、輸送機械などが主な製品である。特に、製造業のエレクトロニクス部門と卸売業の機械・設備・資材部門は、世界的なエレクトロニクス景気の回復を受けて力強く成長した。
一方、金融・保険業の成長は、世界および国内の市場センチメントの変化によって取引が活発化したことが主な要因である。反対に、小売業や飲食サービスは、国内消費者の支出が海外旅行にシフトした影響で縮小した。
なお、シンガポールは国土が狭いため、農林業はほぼ存在せず、農林業のGDPに占める構成比は1%にも満たない。そのため、今後も製造業とサービス業が経済を牽引すると見込まれる。
輸出
2024年のシンガポール貿易輸出額は前年に比べて約6%増加し、約6,745億シンガポール・ドルとなった(2025年シンガポール統計局)。主な輸出品目は機械・輸送機器(半導体などの電子部品類)、石油、化学品(化学工業品、プラスチック・ゴムなど)である。
シンガポールの主な輸出相手国は中国が1位であり、全体の14%を占めている。その他の主要輸入国は、香港(11%)、マレーシア(10%)、アメリカ(9%)である。
2024における日本の順位は第8位であり、輸出金額の4.0%を占めている。日本向けの主な輸出品目は、一般機械(20.3%)、電気機器(16.6%)、精密機器(15.2%)、である。(2023年JETRO)(注)( )内は日本向け輸出入に占めるの当該品の比率。
輸入
シンガポール統計局によると、2024年の貿易輸入額は約6,114億シンガポール・ドルであり、前年に比べて約8%増加した。主な輸入品目は機械・輸送機器、石油、雑工業品、化学製品などである。
2024年には、台湾がシンガポールの輸入相手国の第1位となっており、全体の14%を占めている。その他の主要輸入国は、中国(12%)、米国(12%)、マレーシア(11%)、韓国(6%)、日本(5%)である。
日本からの主な輸入品目は、電気機器(15.3%)、一般機械(12.0%)、貴石・貴金属類(11.8%)である(2023年JETRO)。(注)( )内は日本向け輸出入に占めるの当該品の比率。
シンガポールは輸出額が輸入額を上回る貿易黒字国であり、今後もこの状況が続くと見込まれる。
シンガポールは、米国シンクタンク・ヘリテージ財団による2024年「経済自由度指数」の世界ランキングで1位となった。政治・社会情勢が安定していることから、多くの外資系企業がシンガポールに進出している。
シンガポール統計局によると、2023年のシンガポールにおける対内直接投資残高は約2兆8,431億シンガポール・ドルであり、前年比9.0%増であった。業種別の割合を見ると、最も比率が高いのは金融・保険業(62.9%)であり、次いで卸売・小売業(14.5%)、製造業(9.8%)、専門・事務サービス業(4.8%)となっている。また、製造業の内訳をみると、コンピューター・光学機器が33%、石油製品が14%、食品・たばこが12%、機械類が12%、化学品が9%である。
2023年の日本における対シンガポール直接投資残高は約1,810億USドルである。業種別の割合は、金融・保険業が30.6%、卸売・小売業が23.1%、輸送・倉庫業が21.6%、専門および管理・サポートサービスが10.9%、製造業が8.9%である。
なお、シンガポールに進出している日系企業数は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2019年の1,251社から2020年は966社に減少した。コロナ禍後は、進出企業数は増加傾向にあり、2023年は1,113社となった。ちなみに、シンガポールの在留邦人数は32,565人であり、国別の在留邦人数ではシンガポールは11位である。(2024年外務省)。
投資に関連する特徴としては、資本集約型産業や知識集約型産業への投資案件が多い傾向にある。研究開発業務、アジア域内における地域統括・支援サービス業務などを担う企業に加え、ASEAN市場進出の足掛かりとしてスタートアップによる投資も多い。(2024年JETRO)。
一方、シンガポールにおいては人件費の高騰、国土の狭さに起因する高額な賃料などの問題が、日系企業にとって進出時のリスクとなっている。進出を検討する際には、市場調査やニーズ調査、ライセンスや税制優遇などに関する各種調査をしっかり行うことが重要である。
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