中国を席巻するSNS
もはやSNSの範疇を超える中国のSNSアプリ
SNSといえば、日本でいうLINEやFacebookのように、友達の近況をチェックしたり、写真をアップロードしたり、個人やグループでのチャット、ボイスメッセージ、ビデオコールなどのコミュニケーション機能が備わっているものというイメージを持つ方が多いことだろう。だが、中国では、SNSはそれだけのものではなかった。近年、中国のSNS市場が独自の発展を遂げ、チャット機能や通話機能に加え、決済機能や出会い機能、ゲーム、予約機能など様々な機能がSNSアプリに搭載されており、お年玉を送りあうことまで可能になり、今や国民生活の隅々まで浸透している。今回は、その中からいくつかの機能を紹介しよう。
モバイル決済機能
中国人民銀行が発表した「中国決済清算産業運営報告(2017年)」によると、2016年、中国の商業銀行が処理したモバイル決済の金額は、約157兆5500億元に上る、2015年より45.6%増加した。このように、モバイル決済は迅速に伸びており、中国はキャッシュレス決済時代に向かって急速に進んでいる。数年前まで、上海や北京などの大都市でしか見られないようなモバイルによる決済シーンは、今やどの都市の街中でも見かけることができるようになっている。
レストラン、コンビニにとどまらず、露店商や屋台などでも、人々がスマホを片手にアプリを操作して支払い準備を行っているのが日常風景となっている。買い物や食事を終えると、テーブルに置いてあるPOPに表示されているQRコードをスマホでスキャンし、携帯の画面に表示された品数や金額を確認すると、支払いボタンをタップしパスワードを入力して完了となる。また、SNSで友達同士が少額のお金を送金しあうことも簡単なので、飲食後の割り勘にも不便はない。
他にも、中国の新幹線「高鐵」の切符の購入、タクシーの呼び出し、映画チケットや病院の診察券の予約まであり、携帯さえあれば、財布なしで生活は完結してしまう程SNSによる決済は生活のあらゆる場面で使用されている。このモバイル決済の機能は銀行口座を登録すると簡単に利用することができる。支払はデビット型となっており、銀行口座からお金を事前にアプリのアカウントに振り込んでおき、その中から支払う形となる。
ビジネスツール
現在の中国でのビジネスの場面では、名刺を交換することは少なく、代わりに携帯を出して、SNSのID交換やSNS上で作成した電子名刺の交換が主流となっている。お互いの名刺情報のバーコードを、お互いのスマホが読み取って、一瞬にして電子情報として収録される。電話番号も、メールアドレスも、自動でリスト化される。直後から、電話帳にも掲載され検索できるようになる。そして、連絡先交換をした後もそのままメールではなくSNSで連絡を取り合うのがより好まれている。
また、社内コミュニケーションツールとしてもSNSは活用されている。会話のようにやりとりができるため、メールのように形式的なコミュニケーションが不要で、コミュニケーションのハードルを大きく下げることができる。また、特定の相手やグループ、トピックごとのチャットルームで継続的にやりとりをするため、仕事上のノウハウの蓄積が期待できる。
EC機能
EC機能は企業もしくは個人がSNS上でタイムライン機能を使い広告を打ち、知り合いやフォロワーという近い存在に商品やサービスを販売できる機能である。企業が公式アカウントを通じて直接商品やサービスを提供するB2Cモデルと、個人のアカウントでソーシャルシェアなどを通じて商品を宣伝・販売するC2Cモデルがある。
企業を立ち上げたい個人に対し事業やマーケティングのチャネルを提供し、無料プロモーションを可能にしたため、個人出店者の割合は非常に高く、空いた「すきま時間」を利用して出店し、副収入を得るというのが、中国人の新たな生活様式になっている。アリババなどの既存EC関連会社に比べて、敷居はさらに低く、スマホで、1分の簡単な登録を済ませば、誰でも店を開くことができるという利便性がある。
近年、この仕組みを利用し、海外旅行などで中国現地にいてはなかなか手に入らないような海外製品を仕入れ、母国の友人や知人へ転売する個人出店者が急増している。中国インターネット協会が発表した『2017年中国微商業界発展報告』によると、2017年SNSを利用した個人出店者は2018.8万人に達する見込みである。
10億人以上の中国SNS市場は今、中国の消費者たちの特性、嗜好をとらえて、プロモーション活動を行っていくための、有効なツールとして世界中の企業から注目されている。欧米の大手企業が中国のSNSマーケットに次々と参入している中、日本企業の多くが進出する未来もそう遠くはないのではないだろうか。
(2018月2月)
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