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タイ人の心をつかむ!タイ進出の鍵となる「3S」とは?


バンコクにある高級デパート「Emporium」

サバーイ、サヌック、サドゥアック
 南国・タイのリゾート地では、タイの魅力を「観光の3S」、すなわち「海(sea)」「砂(sand)」「太陽(sun)」で表す。たしかに、これもタイの顔のひとつだ。パタヤやプーケットの美しいビーチは、タイが世界に誇る観光資源といえるだろう。
 しかし、タイを象徴する「3S」が他にもあることをご存じだろうか。それは、「サバーイ」「サヌック」「サドゥアック」。それぞれの意味は以下のとおりだ。

サバーイ…快適だ、元気だ
サヌック…楽しい
サドゥアック…便利だ

 これらはタイで俗に「3S」と呼ばれる、タイ人の気質、あるいは考え方の傾向だ。もちろん、このような気質がすべてのタイ人にあてはまる訳ではない。しかし、日本人から見れば「なぜそうなるのか?」と首をかしげたくなるような、一見不思議なタイ人の行動や流行の数々も、「3S」の観点から眺めると、少しずつ分かってくることが多いのもまた事実だ。そこで、今回はタイでよくみられる「3S」の具体的な例と、「3S」を踏まえた商法やサービスを展開し、タイ進出に成功した日系企業の事例をいくつか紹介したい。

涼しく楽しく快適に!タイ人が求める「3S」生活
 タイの人々は、とにかく暑さを嫌う。熱帯に位置するタイの季節は、3~5月の暑期、6~10月の雨期、11月~2月の乾期に大きく分けられ、一年間の平均気温はおよそ29度だ(タイ気象庁、2016年)。この暑さから逃れるため、人々は徒歩や自転車での移動を極端に嫌う傾向にある。そんな彼らの移動手段は何かといえば、もっぱらオートバイか乗り合いの自動車(ソンテオ)となっている。特に、ソンテオは観光客向けのトゥクトゥクよりもずっと安価で、短距離を気軽に移動することができるため、タイで暮らす人々にとって必要不可欠な交通手段となっている。加えて、ソンテオの客席は小型トラックの荷台部分を改造して設置されており、荷台の屋根が乗客を直射日光から守ってくれる。涼しくて、安くて、便利。まさに、ソンテオはタイ人にとっての「3S」のひとつなのだ。
 もうひとつの代表的な「3S」は、デパート(ショッピングモール)だ。タイのデパートを訪れてまず驚かされるのは、その豪華さだ。贅沢な吹き抜けの空間、螺旋状になっている各階とエスカレーターなど、日本でもめったに見られないような華やかなデパートが数多く存在する。さらに、人気急上昇中の店の出店や、季節ごとのイベント開催など、いつでも話題に事欠くことがなく、常に「最新」が揃う流行の発信地として人々を楽しませている。そして何より、デパートは冷房が効いている。タイの人々にとってデパートは、この上なく便利で楽しく快適な娯楽施設なのだ。

「3S」で成功する日系企業
 2016年4月末時点で、タイに進出している日系企業の数は、バンコク日本人商工会議所に登録されているものだけでも1,707社にのぼる。東南アジア随一のハブ機能を有するタイは、多くの日系企業の重要な拠点となっており、タイへと進出する日系企業の数は今後も増加していくことが予想される。
 さらに、近年はタイの「富裕層」「中間層」の増加が指摘されている。民間調査機関Euromonitor Internationalによると、タイでは年間の可処分所得が1万5000ドル以上の「上位中間層」以上の世帯が、2009年には全体の17.7%だった。同調査機関では、この「上位中間層」以上の世帯が2020年には全体の40%を超え、下位中間層も含めた「中間層」以上の世帯は全体の80%以上となると予想している。
 これまで、タイで成功した日系企業の代表としてあげられてきたのは自動車関連企業だった。しかし、近年ではそれ以外の事業であっても、中間層以上に訴求する「3S」を踏まえたブランド戦略を展開し、いくつかの日系企業がめざましい活躍を見せている。
 そのひとつが、カレーチェーンの「Coco壱番屋」、いわゆる「ココイチ」だ。筆者はタイ出身の友人から「Cocoは日本では安いお店なんだね!」と言われたことがある。そう、タイのココイチは「高級」カレー店なのだ。照明をぐっと落としたムードのある店内と、ゆったりとしたテーブル席をそろえ、高級感のあるブランドイメージを作り上げた。加えて、日本同様、トッピングや辛さを自由に選べる「楽しみ」のアピールにも力を入れた。その結果、タイのココイチは、若いカップルのデートスポットとして、あるいはビジネスマンの商談スペースとして、まさに「ここ一番」の際に使われ、タイの人々の間に浸透していった。
 もうひとつの例が、「無印良品」だ。日本人と比べて華やかではっきりとした見た目を好むタイの人々にとって、無印良品の商品は、売り込み方を誤れば「地味」で魅力に欠けると判断されかねない。しかし、店内のあたたかな照明によって作り出される快適な空間、清潔感のある洗練された商品デザイン、さらにはタイでは決して安くはない値段設定は、「本当に良いもの」という商品イメージにつながった。さらに、文房具から家具まで取り扱う無印良品の品揃えの豊富さ、つまり「便利さ」も、タイの消費者の需要にマッチしたといえるだろう。現在、訪日タイ人観光客の多くが、友人や自分のための土産物として、無印良品の商品を大量にまとめ買いをしており、筆者のタイ人の友人たちも、「タイではMUJIのロゴが書いてあるショッピングバッグを持っているのがカッコイイ」と話す。

 快適で、楽しく、便利な生活。それは、誰もが望む暮らし方だともいえるが、タイの人々の「3S」へのこだわりは非常に強い。「3S」を手堅く踏まえたサービスを展開することが、タイの消費者に訴求する大きな要因となることは間違いないだろう。


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