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ストップ!加速する未成年の肥満率– 中国(上)


 

中国の肥満未成年数、世界No.1?
 周知のとおり、経済成長を背景に、中国はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に上り詰めた。国民の生活水準向上に伴い、近年、中国はもう一つの「大国」にのし上がった。それは、同国の肥満人口が世界一の米国に次ぐ6,200万人に達し、世界有数の「肥満大国」となったことだ。より深刻なのは、肥満とされる未成年の人口が爆発的に増え、将来、糖尿病やがんなどにかかる予備軍が急増していることが挙げられる。
 経済格差が拡大する中国では、慢性的な栄養失調により痩せ気味の児童は1,270万人と東京都の人口を上回る一方、肥満児童(※注1)は1,530万人と世界一の水準に達したとされる(World Food Programme 2016年、New England Journal of Medicine 2017年)。また、これまで体重超過や肥満は中国の都市部で顕著だったが、近年、この傾向は農村部でも強まり始めている。
 児童や青少年の肥満問題は中国にとどまらず、インドやメキシコ、ブラジル、エジプトなどでも深刻化し、多くの国で肥満率は危険なペースで上昇している。他方で、日本や英国を含む所得水準が高い多くの欧州各国では未成年の肥満率は安定して推移しているとされる。
 NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC) のデータをもとに、1985年から2016年の間に日本と中国の5−19歳人口における肥満率(※注2)がどのように変化したのかみてみると、2016年時点で、日本の男子の肥満率は1985年より2ポイント上昇の5.0%、女子の肥満率は0.7ポイント上昇の1.7%にとどまった。一方、同じ期間の中国では、5−19歳の児童・青少年において、男子は14.9ポイント上昇の15.4%、女子は6.9ポイント上昇の7.1%に達したことが分かる。
 ただ、同期間中に男子、女子ともに25ポイント以上上昇したクック諸島などポリネシアやミクロネシア地域と比較すると、中国の肥満増加率は突出しているわけではない。しかし、人口が多いゆえに、未成年の肥満増加率を抑制できなければ、近い将来、健康問題や社会問題のリスクが非常に大きなものになることは想像に難くない。

未成年の肥満、なぜ増えた?
 中国の1人あたり国内総生産(GDP)は2006年の2,000ドル台から10年間で8,000ドル程度まで増加し、社会経済の急速な変化は、カロリーや炭水化物系の摂取増加をもたらした。また、中国では、ハンバーガーやフライドチキンのようなファーストフードが児童や未成年の間でとくに人気である。多くの国と同様に、中国人の食生活が欧米化し、高脂肪、高カロリー、低食物繊維になったことや運動不足が肥満の主な要因と考えられる。
なお、近年の中国で注目される変化は、未成年の肥満問題が沿岸部の大都市だけでなく、内陸部の中小都市や比較的裕福な農村部にも広がっていることだ。その原因として、二つの理由が挙げられる。
(1)今まで、都市部と比べて所得向上が比較的遅かった地域の人々が、テレビなどのメディアを通じて、都市部の中間層のライフスタイルを模倣していることだ。これを裏付ける現象として、中小都市や農村部で、店名がマクドナルドやケンタッキーを連想させるような地場のファーストフード店が流行していることが指摘される。
(2)中国の農村部などでは未だに太っていることが「成功」や「裕福」のシンボルという考えが根強く、このような保護者の観念は子供の成長にも影響すると考えられる。実際、中国ではファーストフードのことを「垃圾食品」(「ジャンクフード」)と呼んでいるにも関わらず、子供のモチベーションが上がるよう、保護者がテスト後のご褒美として子供をファーストフード店につれていくケースは決して珍しくない。
研究によると、中国児童の糖尿病罹患率はすでに米国の同世代を上回っており、さらに深刻なのは、子供時代の肥満は成人肥満に移行しやすいだけでなく、肥満はより高い確率で成人後の糖尿病や脳血管疾患など多くの慢性疾患を引き起すということだ。 そのため、未成年の肥満問題を抱える中国にとって、食習慣を含む生活習慣の改善は喫緊の課題といえる。
 現在、中国のメディアも「子皿に分けて盛り付ける」、「腹8分目とする」、「徒歩で登校する」といった生活習慣が日本の低い肥満率や長寿に寄与していると、注目し初めている。これらの習慣は日本人にとってはごく当たり前なものだが、中国では常識として定着していないものや、ライフスタイルの変化に伴い、あまり実践されなくなったりしたものだ。そういう意味で、未成年の肥満率が日本を上回る中国において、日本人の食生活習慣や日本式ダイエットは参考になるところが大きいのではないか、と筆者は考える。また、経済・文化面で中国と関わりの深い日本企業にとっても、肥満問題の解決はビジネスチャンスとなるかもしれない。

 未成年の肥満問題を受け、中国政府も「肥満撃退」に乗り出している。これまで、公共の運動施設を増やすことや、学校で最低1時間の運動時間を確保することを目標に掲げてきたが、万全とはいえない。次回コラムでは、未成年の肥満問題に対する政府の取り組みを紹介し、中国におけるダイエット産業の展望についても触れてみたい。

(※注1)ここでは、BMI(身長からみた体重の割合を示す体格指数)30以上を「肥満」、BMI25以上を「体重超過」と定義している。
(※注2)WHO(世界保健機関)の判断基準をもとに、NCD-RisC が推測したBMIカテゴリー分類で「肥満」とされる未成年の割合(prevalence)を指す。


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