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文化・経済の両面で密接なインドとASEAN


インドから見た東南アジア
 インドと東南アジアの結びつきは深い。様々なレベルで、人・モノ・知識がインドと東南アジアの間で地域の垣根を越えて移動してきた歴史がある。ヒンドゥー教及び仏教の知識はインドから東南アジアへ伝わり、インドの古典であるサンスクリット語は東南アジア諸語に大きな影響を与えた。バンコクの空港の名前であるスワンナプームは「黄金の土地」を意味するサンスクリット語が由来である。また、同空港の中にはヒンドゥー教の天地創造神話をもとにした彫刻が飾られている。文化圏としての二つの地域の結びつきは日本人が考えているよりも深い。近年で言えば、シンガポールでは、南インド系の出稼ぎ労働者が多いことに驚かされる。同国のITや金融のエリートにもインド系が多い。
 本コラムでは、インドとASEANの二大経済圏の接続について考えてみたい。人口でみると、インドが約13.6億人、ASEANが6.5億人となっており、20億人規模の経済圏は世界最大レベルである。このマーケットの可能性は大きい。

インドとASEANの貿易動向
 2019年のインドからASEANへの輸出額は約265億ドル(全輸出のうちのおよそ1割)、輸入が468億ドル(同1割程度)である。ちなみにインドから日本への輸出額は約49億ドル、輸入が約106億円である。
 近年のインドとASEANの貿易額の動向としては、輸出額では2013年以降平均3%で伸びており、特に15年以降は高い伸び率で推移している。輸入は13年以降平均6%の伸びで推移し、輸出入を合わせた貿易額も拡大しており、特に16年以降は年14%程度で推移している。ASEANの中で輸出額が多いのがシンガポール(2019年度のASEANへの輸出総額のうちの約29%)、マレーシア(約20%)ベトナム(約17%)、である。一方、輸入額が多い国は、インドネシア(2019年度のASEANからの輸入総額のうちの約27%)、シンガポール(約26%)、マレーシア(約18%)である。
 シンガポールへの輸出主要品目は金額順に石油など鉱物性燃料、船舶、機械等であり、輸入品目は金額順に電子機器・部品、機械、石油製品である。シンガポールとの貿易も金額ベースで拡大傾向にあり、2016年以降輸出が平均20%、輸入は17年から18年に2倍以上の伸びで推移している。15年以降17年まで黒字でその後赤字となっている。
 ベトナムへの輸出主要品目は金額順に食肉、鉄鋼、魚類・甲殻類となっており、食品の取引が多い。輸入品目は金額順に電子機器・部品、銅製品、無機化学薬品である。輸出は15年以降金額で年20%ほど拡大している。輸入は平均50%ずつ拡大しており、シンガポールと同様18・19年度を除いて黒字である。
 マレーシアに対してインドは15年以降毎年赤字である。輸出主要品目は金額順に鉱物性燃料、アルミニウム、化学薬品であり、輸入品目は金額順に鉱物性燃料、動植物油脂、電子機器・部品である。
 インドネシア向けの主要輸出品目は金額順に化学薬品、機械等、輸送機器であり、輸入品目は石油製品、動植物由来油、船舶である。インドネシアに対してインドは毎年赤字である。(以上すべての数字の出典はDepartment of Commerce, Export Import Data Bank, India Gov.)
 インドに進出している日系企業にとっても、ASEANは重要な地域という位置づけである。JICAが2019年に行った調査によると、ASEANへの輸出を拡大したいと考えている企業は56.3%だった。またインド進出日系企業の4分の1の企業が今後1~3年内の事業・製品の輸出市場として最も重要と考える地域としてASEANを挙げている。

注目されるBIMSTEC (ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアティブ)
 ASEANとインド経済圏連携の試みはこれまでRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の枠組みの中で構想として考えられてきた。ところが2019年にインドがRCEPからの交渉離脱を決め、連携は頓挫したように見える。離脱の背景にあるのは、RCEPにおける中国の存在である。同枠組みによる中国のASEANおよび南シナ海へのさらなる進出はインドにとって防衛・外交上の懸念であり、また経済的には対中国貿易赤字の拡大も見込まれた。関税障壁の撤廃は安価な中国製品のインド市場への流入を促し、国内産業に深刻なダメージを与えるという危機感がインド国内に存在する。
 インドはRCEPの交渉から脱退したが、東南アジア諸国との繋がりを諦めたわけではない。二つの経済圏の結びつきとして今後重要になるのが、インド、バングラデシュ、スリランカ、タイ、ミャンマー、ネパール、ブータンの7か国から構成される、BIMSTEC (ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアティブ)という地域経済協力の枠組みである。このスキームは貿易や投資など経済分野から、テロ対策、環境など幅広い分野での協力を目指している。特にインドが注目しているのが国境を接するミャンマーである。ミャンマーはプラチナやレアメタル、天然ガスなど天然資源が豊富な国である。現在、ミャンマーからの輸送方法の整備が進められており、タイ・ミャンマー・インドを結ぶ高速道路建設などがすでに進んでいる。ミャンマー西部やバングラデシュとインドの国境地帯は地理的に複雑な地域であり、山岳地帯や無数の河川が存在する湿地帯などが存在する。また港湾インフラの拡充による域内の海上輸送の強化も課題となっており、高い技術力が求められるインフラ開発に日本のノウハウを生かすことができる。さらに、インド・ミャンマー間の陸路の移動が可能になることで、タイなどインドシナ半島からインドにかけてヒト・モノ・金の移動が活発化し、経済的結びつきを強化できる。
 ミャンマーに対しては中国も熱い視線を注いでおり、同国の天然資源の採掘とミャンマーと雲南省を結ぶ物流ルートの構築をすでに中国は進めている。BIMSTECの参加国の顔ぶれを見ても日本への信頼が厚い国が多い。東南アジアとインドの二大経済圏を結ぶ経済回廊の構築により、新規のマーケットと新たなビジネスチャンスの創出が期待される。

(2021年3月)


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